さまよえる前日鳥

読んだもの、観たものについての取り留めない覚え書き。ネタバレ注意。

イギリス文学

『Summer』(夏)アリ・スミス

アリ・スミスの四季シリーズ最終作。 前作、前々作の感想はこちら。 suzynomad.hatenablog.com suzynomad.hatenablog.com 16歳のSacha Greenlawは環境問題や人権についての意識が高い。その弟で13歳のRobertは非常に優秀だが問題行動を繰り返している。二人…

『Spring』(春)アリ・スミス

アリ・スミスによる四季四部作の三作目。 前作『Winter』の感想はこちら。 RichardはTV・映画のディレクター。長年二人三脚でやってきた脚本家でソウルメイトと言えるPaddyを病で失い、その悲しみから立ち直れないでいる。現在他の脚本家と組んでいる仕事に…

『The Sense of an Ending』(終わりの感覚)ジュリアン・バーンズ

2011年ブッカー賞受賞。ジュアン・バーンズはこれ以前に既に3回同賞のショートリスト入りをしていて、本作でようやく受賞を果たした。 物語は主人公Tonyの一人称で、二部構成になっている。 第一部では、Tonyが青春時代の記憶を語る。高校時代の友人たち、特…

『ミドルマーチ4』ジョージ・エリオット

廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫 一巻の感想 二巻の感想 三巻の感想 ネタバレです。 とうとう最終巻。 バルストロードは暗い過去をネタにラッフルズが強請ってくる為、恐怖のどん底に突き落とされる。そしてラッフルズが病気に倒れると、彼の死を願うバルス…

『ミドルマーチ3』ジョージ・エリオット

廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫 一巻の感想 suzynomad.hatenablog.com 二巻の感想 suzynomad.hatenablog.com ネタバレです。 カソーボンが死んだ。人生かけていた論文があまり見込みのないものだということに薄々気づきつつ、それすら生きているうちにまと…

『ミドルマーチ2』ジョージ・エリオット

廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫 一巻の感想はこちら suzynomad.hatenablog.com どんどん盛り上がってきたよ! この巻ではフェザストーン老人の遺産相続をめぐる騒動、カソーボン夫妻の関係悪化及びドロシアとラディスローの接近、リドゲイトとロザモンドの…

『ミドルマーチ1』ジョージ・エリオット

廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫 取り敢えずまだ1巻目なので、簡単な覚え書きを。 久しぶりのヴィクトリア調文学。私はこの時代のイギリス小説がかなり好きで一時期かなりハマって読んでいたのに、傑作と名高いこの作品は未読だった。翻訳者の廣野由美子氏…

『Cloud Atlas』(クラウド・アトラス)デイヴィッド・ミッチェル

ネタバレしてます。 “As if Art is the What, not the How!” 本作の登場人物の一人Timothy Cavendishの言葉だ。勿論反語的に使っていて、Artは”What”ではなく”How”だと言っているのだ。そして本作は”How”に非常にこだわった作品である。 物語は6つ。オムニバ…

『The Uncommon Reader』(やんごとなき読者)アラン・ベネット

ネタバレしてます。 エリザベス女王はある日飼い犬を追って行った先で、宮殿の厨房の出入口付近に停まっていた移動図書館に出くわす。読書とは縁のない人生を送ってきた女王だが、礼儀として本を一冊借りていく。それはかつて勲章を授けたアイヴィ・コンプト…

『The Mirror & the Light』(鏡と光) ヒラリー・マンテル

ウルフ・ホール三部作の最終作 2020年ブッカー賞ロングリスト、2020年女性小説賞ショートリスト、2021年ウォルター・スコット賞 第一部の感想はこちら suzynomad.hatenablog.com 第二部の感想はこちら suzynomad.hatenablog.com ネタバレです 前作はアン・ブ…

『闇の奥』ジョゼフ・コンラッド

光文社古典新訳文庫 黒原敏行訳 ✴︎ネタバレしてます 船乗りのマーロウは蒸気船の船長としてアフリカの奥地へ赴任する。そこには人を寄せ付けない沈黙の密林が暗く圧倒的な力を有して周囲を取り巻いていた。その地でマーロウは、奥地の出張所にいるクルツとい…

『Winter』(冬)アリ・スミス

アリ・スミスのBrexit小説、四季シリーズ第二作。 ライター志望の青年アートはクリスマス直前に恋人のシャーロットと大喧嘩、彼女は怒って出て行ってしまう。クリスマス休暇に実家に行って母親にシャーロットを紹介する予定だったアートは、街で見かけたラッ…

『Bring Up the Bodies』(罪人を召し出せ)ヒラリー・マンテル

ウルフ・ホール三部作の二作目。 2012年ブッカー賞、コスタ賞受賞 三部作の一作目の感想はこちら suzynomad.hatenablog.com ✴︎激しくネタバレしてます。 前作と同じスタイルだけど、前作に比べてフラッシュバックや脱線が少なく、話がほぼ一直線に進むのでか…

『Wolf Hall』(ウルフ・ホール)ヒラリー・マンテル

✴︎ネタバレ注意! 2009年のブッカー賞と全米批評家協会賞を受賞してBBCのドラマにもなった。更にガーディアン紙が選ぶ「21世紀の100冊」で堂々の第一位に輝く。まあ21世紀はまだ始まったばかりだから相当気の早いリストだけど。 舞台は16世紀イングランド、…