さまよえる前日鳥

読んだもの、観たものについての取り留めない覚え書き。ネタバレ注意。

『ミドルマーチ2』ジョージ・エリオット

廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫

 

一巻の感想はこちら

suzynomad.hatenablog.com

 

 

どんどん盛り上がってきたよ!

 

この巻ではフェザストーン老人の遺産相続をめぐる騒動、カソーボン夫妻の関係悪化及びドロシアとラディスローの接近、リドゲイトとロザモンドの婚約などのエピソードが中心になっている。

 

この巻の読みどころは何と言っても老人の遺産相続をめぐる狂想曲だ。金が欲しくて互いに疑心暗鬼になっている様が生々しい描写で語られ、非常に笑える。強欲と品の無さもここまで来ると最早清々しい。そんな中で、メアリとその家族の堅実さと誠実さは真珠のように輝いている。ちょっと良心的すぎて非現実的ではあるが。

 

ドロシアとカソーボンの結婚はやはり間違いであったと双方が自覚し始める。カソーボンは卑小さがダダ漏れで、礼儀正しさ以外の美点が全く見つからない。ドロシアは気の毒だけれど、純真さは時に事態の悪化を招くものなのだ。

 

リドゲイトは衝動的にロザモンドと婚約。あまり経験から学んでないようだ。カソーボンと同じく、リドゲイトも結婚相手に対してまるで相手の人格など存在しないような自分勝手な理想を思い描いている。そりゃあ失敗するだろう。まあそれは女性側にも言えることかもしれないが。

 

とにかく全体的に金と結婚を巡って人々が右往左往している様が可笑しくて、完全にソープオペラなのだけれど、語り手の微に入り細を穿つ心理描写のおかげで、非常に味わい深い昼ドラになっている。

 

読書ガイドは第1巻だけかと思ったら全巻末についているようだ。素晴らしい。

 

三巻はこちら

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