さまよえる前日鳥

読んだもの、観たものについての取り留めない覚え書き。ネタバレ注意。

『ミドルマーチ4』ジョージ・エリオット

廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫

 

一巻の感想

二巻の感想

三巻の感想


 

 

ネタバレです。

 

 

 

 

とうとう最終巻。

 

バルストロードは暗い過去をネタにラッフルズが強請ってくる為、恐怖のどん底に突き落とされる。そしてラッフルズが病気に倒れると、彼の死を願うバルストロードは、知らずに医師の指示と反対の事をしようとしていた使用人を止めず、ラッフルズを死なせる。安心したのも束の間、ラッフルズは既にバルストロードの過去を酒場でバラしていた為、ラッフルズの死はバルストロードによるものだという噂が瞬く間に広まってしまう。

 

リドゲイトは借金地獄で身動きが取れなくなり、最終的にバルストロードに金を借りて借金を返すことができた。ところがラッフルズの診察をしたのがリドゲイトであったため、全く何も知らなかったにもかかわらず、町中の人に共犯者として見られてしまう。絶対絶命のピンチ。

 

そこに颯爽と現れた我らがヒロイン、ドロシア。リドゲイトの無実を信じて疑わないドロシアは、その美しい心でリドゲイトの心を救い、小切手を渡してバルストロードからの金を返せるようにする。更には自分の葛藤と苦痛を乗り越えてロザモンドにも手を差し伸べる。

 

物語はハッピーエンドだけれど、ほろ苦くもある。ドロシアもリドゲイトも当初心に思い描いていた大志を実現することは出来ず、大きな挫折を経て目の前の現実を受け入れる他なかった。特にリドゲイトは、開業医として成功し裕福になったにもかかわらず挫折感が消えることはなかったし、妻と心を通わせることもなかった。

 

ドロシアは大きな事はなし得なかったかもしれないけれど、愛する人と幸せな家族を作ったし、周りの人達に良い影響を与え続けた。物語の最後に語られたように、この世界を良くするためには壮大な行為だけではなく、日々の地味で小さな行為もまた大切なのだ。

 

ようやくこの作品を読むことができて満足。訳が読みやすいからか、少しずつゆっくり読むつもりが思いの外あっという間に読み終えてしまった。