廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫
一巻の感想
二巻の感想
ネタバレです。
カソーボンが死んだ。人生かけていた論文があまり見込みのないものだということに薄々気づきつつ、それすら生きているうちにまとめられなさそうだ、という状況は気の毒ではあるけれど、それは卑小さの言い訳にはならない。カソーボンの意地悪によって、ドロシアとラディスローは離れざるを得なくなる。
リドゲイトとロザモンドは生活力ゼロのくせに贅沢に慣れきっており、借金に苦しむことになる。金の切れ目が縁の切れ目、夫婦関係は急速冷凍。
バルストロードが隠してきた過去の秘密が明らかになり、それはラディスローと密接な関係があった。それにしても、自分の褒められたものではない行為を正当化する為に、人は何と理屈を捏ね回すことよ。
この巻の私的ポイントはブルック氏の政治活動だ。この人は物語の中でのボケ担当だと思う。悪気はないんだけれど、何を言ってもやっても今ひとつズレていて、天然。彼の選挙演説シーンは最高!
当時の社会が大きく変化していく中で、そういった変化をもたらす者と抵抗する者の対立する様子も描かれる。新しいやり方を持ち込もうとしているリドゲイトは他の医師達から敵視され、鉄道敷設の為にやってきた測量技師たちは襲われる。政治的にも改革や選挙法改正というテーマが中心になり、それぞれが各陣営について激しく争う。
遂に次が最終巻。えっ、もう終わり!?
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