さまよえる前日鳥

読んだもの、観たものについての取り留めない覚え書き。ネタバレ注意。

『ミドルマーチ1』ジョージ・エリオット


廣野由美子訳 光文社古典新訳文庫

 

取り敢えずまだ1巻目なので、簡単な覚え書きを。

 

久しぶりのヴィクトリア調文学。私はこの時代のイギリス小説がかなり好きで一時期かなりハマって読んでいたのに、傑作と名高いこの作品は未読だった。翻訳者の廣野由美子氏は19世紀のイギリス小説が専門かつ日本ジョージ・エリオット協会の会長であるということで、巻末の読書ガイドはエリオットの生涯や作品の時代背景のみならず、この作品自体の解読も詳しくて充実している。

 

物語はドロシアとリドゲイトという、若く理想に燃える二人の人物を中心に進んでいくようだ。ドロシアは信仰深く、精神的に高尚で意義ある人生を送りたいと強く願いつつもどうすればよいのかわからない。そんな中で学究肌で地味なカソーボンと出会い、彼こそが自分の人生を導いてくれる理想的な夫だと思い込んで結婚する。あくまで思い込みなので、直ぐに現実に直面する。

 

一方ミドルマーチの新顔であるリドゲイトは早くから医学の道を志し、自分のやりたい事がはっきりしていて自信と意欲に満ち溢れている。医療を通して人類へ貢献したいと考えているのだ。但しその他の事については比較的俗物だし、自惚れてもいる。町一番の美女で上昇志向の強いロザモンドと出会い心惹かれる。

 

登場人物の性格や思考、感情の揺れ動きが非常に丁寧に描かれている。人間観察がかなり鋭くて語り手が人物に寄り添ったり皮肉ったり突っ込んだり、心理描写がとても的確で笑ってしまう。

 

二巻はこちら

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