さまよえる前日鳥

読んだもの、観たものについての取り留めない覚え書き。ネタバレ注意。

『República luminosa』(きらめく共和国)アンドレス・バルバ

熱帯の町San Cristóbalに何処からともなく現れた子供たち。彼らは奇妙な言葉を話し、子供らしく遊ぶ一方で、盗みを働き暴力を振るった。そしてある時32人の子供たちは一斉に死んでしまった。

 

その22年後、市の社会福祉課長としてこの事件を間近に見た主人公が、事件に関する新聞報道や出版物、テレビ番組などを引用しながら当時を振り返り、一体何が起きたのかを物語るという構成になっている。

 

事件の結末は冒頭で示されていて、そこに至るまでの過程が少しずつ明らかにされていく。何故そうなったのかを知りたくてどんどんページをめくってしまう。出だしから不穏な空気が漂い、グイグイ読ませる。面白い。

 

 

 

 

ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寓話として色々な読み方ができる作品だと思うが、私は話者である主人公の他者(異文化)へ対峙する態度が興味深かった。

 

主人公の姿勢は、異文化を理解しリスペクトしようという良識ある欧州人のそれだ。

 

主人公は先住民の融合政策を担当していて、San Cristóbalの先住民ñeêの女性Maiaと結婚している。しかし、彼女を愛していると同時にその奥底は計り難いとも感じている。会話をしていて、どこかはぐらかされたような気持ちになることも多い。そんな時は「Mi mujercita oriental」と、不可解さを文化の差異に帰することもある。

 

不可思議な子供たちに対する姿勢にも暖かみがある。彼らを理解しようとし、一方的に断罪するのではなく公正であろうとしている。しかし、辿り着いた子供たちの隠れ家の美しさに心を打たれ、その精神性に感動した後、たった一つの卑語で幻想を打ち砕かれ打ちのめされる。

 

異なる文化を持つ者を、頭ごなしに拒否するのも、美化するのも、結局は共存を妨げるのではないか。そもそも先住民の「融合」などという考えは傲慢ではないのか。

 

異なる他者の中には勤勉な者も怠惰な者も心優しき者も邪悪な者もいる。ただそれだけのことを、属性から切り離してフラットに受け入れることの、なんと難しいことか。

 

ところで、一つかなり気になったことが。犬が22年以上生きてるのは変じゃないか?