小川高義訳 ハヤカワepi文庫
オリーヴ・キタリッジの続編を読む予定なので、復習の為に再読。初めてのエリザベス・ストラウトがこの本で、一読して大好きになった。ゆっくり味わいながら、何度でも読みたい連作短編集。
この本が魅力的なのは、オリーヴという人間のキャラクター設定が絶妙なところにあると思う。ゴツくて無愛想で辛辣、気分のムラが激しくて癇癪持ち、ちょっと毒親の傾向もある。悲しさとか不安とか恥ずかしさ等の感情を怒りで表現してしまいがち。でも、思いやりに欠けた発言したりするくせに、人を見抜く目とか観察力があって、苦しんでいる若者に心を痛めたり手を差し伸べたりもする。妙に気になるキャラクターなのだ。他所の奥さんについて「旦那が無愛想なのを尻拭いして生きてきたのかもね」なんてコメントするけど、妻と夫を逆にしたらそっくりそのまま自分達のことではないか。オリーヴという人は自覚があるんだか無いんだか分からない。
それから作品によってオリーヴの出る量が異なるのも良い。キャラがキャラだけにオリーヴが出突っ張りだとこちらも疲れるだろうけれど、チラリとしか出ない時はまた出てきて欲しいな、なんて思う。
それにしてもアメリカの小説やドラマには頻繁にドーナツとコーヒーが出てくる。この本でも登場人物がやたらにドーナツ買ったり食べたりしていて読んでる方も食べたくなる。これがイギリスになると紅茶かな。老いも若きも湯を沸かして、夏でも熱い紅茶を飲んでいるイメージがある。
さあ、これからHBOのオリーヴ・キタリッジのドラマを観て、続編を読もう。オリーヴ三昧だ。
【追記】
ドラマ全4話を観た。ディテールは原作から大分変更されているけれど、複数の話を上手く繋げてあるし、原作の雰囲気を十分に捉えている。フランシス・マクドーマンド始め役者達の演技が素晴らしい。
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