さまよえる前日鳥

読んだもの、観たものについての取り留めない覚え書き。ネタバレ注意。

2022年 映画一言感想

今年映画館に行って観た映画の極めてテキトーな感想を。映画館も歩いて行けるところにあるからもっと頻繁に行けそうなものだけど、根が出不精なので結局たまにしか行ってない

 

ネタバレしてます。

 

 

 

 

 

The Menu』(ザ・メニュー)マーク・マイロッド監督

そして誰もいなくなった風「最後の晩餐」とでも言えばいいのか。特権階級&高級レストランを極めてブラックなやり方で皮肉っている。個人的に一番不気味(褒めてる)なのはニコラス・ホルト演じるタイラー。あと落ち目の映画俳優が招待受けた理由に笑った。私は歳を取るごとに生々しく痛そうなシーンが苦手になってきたので、ちょいグロなシーンは直視できず。

 

Amsterdam』(アムステルダム)デヴィッド・O・ラッセル監督

無闇に豪華なキャストと予告編に惹かれて鑑賞。前半部分の三人の友情話はなかなか良いと思うのだけど、後半の陰謀を明らかにしていく過程がちょっと物足りなかった。顔のアップがやけに多いカメラワークで、それが気になった。ジョン・デヴィッド・ワシントンは結構好きな方の役者ではあるんだけど、いつも今ひとつ捉えどころがないというか、個性が掴みきれない。『TENET』の時は「名もなき男」なワケだからそれがかえって良かった気もするけど。ラミ・マレックは出てきた瞬間から怪しさ満載。あれっ!007NTTDのサフィンがこんなところに⁉︎ という雰囲気で、黒幕だったと分かっても何の驚きもない。随分後から出てきたロバート・デ・ニーロが美味しいとこ全部持って行った気がする。

 

See How They Run』(ウエスト・エンド殺人事件)トム・ジョージ監督

今一番好きな役者サム・ロックウェルが出てる為、問答無用で映画館へ。こちらも豪華な顔ぶれだけど日本では劇場公開しなかったのかな。近年クリスティが流行っているのか、ケネス・ブラナーはクリスティ作品映画化してるし、『ナイブズ・アウト』はクリスティ風味だし、この作品はクリスティの戯曲『ねずみとり』を上演する劇場で殺人事件が起こり、クリスティっぽい演出がされてて最後はクリスティ本人役まで出てくる。

ユーモアがあって楽しめたけど、何だか犯人が気の毒でラストは私はあまり笑えなかった。あと個人的にはメイン二人のプライベートとか心が繋がる過程とかもうちょっと欲しかった。もっとサム・ロックウェルに演技させてー!シアーシャ・ローナンは真面目さとボケとミーハーぶりのバランスが良くてキュート。スプリットスクリーンって余り好きじゃないけれど、この作品では割と効果的だったように思う。

 

Top Gun: Maverick』(トップガン マーヴェリック)ジョセフ・コシンスキー監督

前作が全く記憶にないので、まず家で復習した。映画が始まる前にトム・クルーズの挨拶映像もあったし、上映前の予告はミッション・インポッシブル(何作目⁉︎)。私はトムに対して特に思い入れはないのだけど、この人は本当に映画作るのが好きなんだろうなと思うし、そこに好感が持てる。しかし若い時はよく社会派な映画に出ていたのに、歳を取るごとにアクション映画ばかりになってきた。普通は逆じゃないんだろうかよく体が持つな。

冒頭から前作そのままでニヤリ。前作へのオマージュがかなり強いけれど、細部は21世紀らしくアップデートしてある。パイロット達が男女人種様々なのも勿論だし、肉体美を見せるスポーツ・シーンも前作は何の脈絡もなく体見せるだけのビーチバレーだったけど、本作はチーム意識を高めるとか何とか流石に目的がある。恋愛部分も一応ピロートークで子供との関係についての話が入ってるあたりそれなりに意義を持たそうとしているようだ。もう恋愛は入れなくったっていいじゃんと思うけど、まあトム様だからしょうがない。

王道でよくまとまっていて、映像も臨場感があって映画館で観るのに相応しい映画。私は機体にGがかかる時、思わず座席に押しつけられて体がこわばった。

 

Alcarràs』カルラ・シモン監督

前の『Estiu 1993』もそうだったけど、この監督は子供達の遊ぶシーンを撮るのがなかなか上手い。本作に登場する役者は全員素人らしい。家族の一人一人がそれぞれのやり方で試練に向かう(或いは向かわない)姿が淡々と描かれている。極めて地味な作品だけど、私は好き。

 

Belfast』(ベルファスト)ケネス・ブラナー監督

監督の自伝的映画。少年の目線で描かれている所がポイントで、そのおかげで狭いエリアが全世界のように感じるし、カトリックとプロテスタントの対立の恐ろしさと愚かしさが際立つ。両親が美男美女でカッコ良すぎるし、最後の父親と民兵の男との対決なんてまるで西部劇のヒーローみたいだけれど、少年から見るとそうなんだろう。アイルランド問題に一家言ある同行者は、イギリス警察がカトリック地域をあんなにきちんとガードするとは思えない、とかブツブツ言ってたけど。私から見ると、カトリック地域で穏やかに暮していたプロテスタント家族の立場から、プロテスタント民兵とか牧師とかへの批判的な目が感じられて良かったのではと思う。

 

CODA』(コーダあいのうた)シアン・ヘダー監督

親離れ子離れ物語。聴覚障害のある家族のキャラクターが立っているのが良い。特に両親の個性が強くて、性的にかなり活発で開放的なので娘が困ってるのが笑える。全体的にとてもバランスの良い映画だと思った。しかし何故邦題はやたらに愛という言葉を入れたがるのか。しかもひらがなだよ。

 

『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督

主人公の妻がいかにも春樹風の謎めいた女っぽいのが好みではないけれど、多言語劇は興味深いし、『ワーニャ伯父さん』と主人公をオーバーラップさせてるところもいいと思う。しかし約3時間というのは長い。退屈したわけではないけど、もう少し短く出来たんじゃないだろうか。映画館で見る時はあまり身動き出来ないし、トイレも心配だしな。

 

 

この中で一番いいと思ったのは『Belfast』かな。でも実はストリーミングで観た『El Laberinto del Fauno』(パンズ・ラビリンス)が一番気に入ったかも。